宇宙天気ニュース (これは過去のニュースです)

 
当時「情報通信研究機構宇宙環境計測グループ」よりお届けした記事です
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これまでの経過 (過去のニュースの全リスト)
2006/12/ 5 10:38 新しい活動領域によって、小規模フレアが多発しています(最大C4.9)。太陽風、磁気圏は静穏です。
2006/12/ 5 21:00 太陽でX9.1の非常に大規模なフレアが発生しました。今後の変化に警戒が必要です。
2006/12/ 6 12:00 X9のたいへん大規模なフレアが発生しました。フレア活動は活発に続いています。コロナホールによる高速風が始まりました。
2006/12/ 7 11:18 X6.5の大規模フレアが発生しました。太陽放射線が増加しています。高速風の影響でオーロラが活発です。
2006/12/ 8 01:06 太陽放射線の強度が1000PFUを超えました。たいへん強まっており、注意が必要です。
最新のニュース

2006/12/ 8 11:30 更新
太陽放射線が2000PFUに達し、たいへん高いレベルです。高速風の影響で、オーロラ活動も活発に続いています。

担当 篠原

宇宙天気が、全面的に乱れた状態になっています。

まず、SOHO衛星のLASCOカメラの最新画像が得られましたので、紹介します。
今日の1枚目の図は、LASCO C2カメラの動画、
2枚目の図は、LASCO C3カメラの大きめの画像です。
どちらの画像にも、雪の様な白いノイズが画面全体に舞っています。
このノイズは、たいへん強まっている太陽放射線(非常に高速のプロトン粒子)によるものです。
SOHO衛星のカメラに飛び込んで来た放射線が、これらの明るいノイズを作るのです。
SOHO衛星のこのような画像を、Snowstorm(吹雪)と呼んでいる様です。

見ているだけでも痛そうな映像ですが、画面全体が真っ白になるほどの激しい現象もあります。
人工衛星や宇宙飛行士にとっては、危険な高エネルギー粒子の雨です。

GOES衛星の観測によると、太陽放射線は昨日いっぱい増加を続け、
8日4時(世界時7日19時)に2000PFUに達しました(赤線の10MeV以上の粒子)。
たいへん高いレベルです。
過去11年間の平均では、太陽活動の活発な時期を含めても、
年に1〜2回しか起こっていない規模の現象です。
衛星では障害が発生しやすい状態になっていますので、注意が必要です。

グラフの最新の部分(右端)を見ると、やや減少の傾向が見えています。
よりエネルギーの高い、青線、緑色線は、ピークを迎えるとともに、減少が始まっていて、
ひとまず、最高レベルに達したとは思われます。
ただ、問題は大規模なフレアがX9.0、X6.5と2回にわたって発生していることです。
現在のピークが、これら2つのフレアの影響の結果なのであれば、
今後は次第に減少して行くと思われます。
しかし、まだX9.0の影響だけで、X6.5の影響がこれから及ぶのだとすると、
2回目の山がやってくるかもしれません。
引き続き、太陽放射線の変化に注意する必要があります。


930黒点群の活動は、いくらか落ち着いている様です。
昨日のニュース以降のおもだったフレア活動は、
7日13時半(世界時7日4時半)にC6.1の小規模フレア、
8日3時半(世界時7日18時半)にM2.0の中規模フレアなどです。
普段であれば、これだけでも十分活発な活動ですが、
これまでと比較すると落ち着いた印象を受けます。

X線のグラフを見ても、フレアが起こっていない時のX線の底の強度が、
12月6日と7日を比較すると、一段下がっているのが分かります。
このことからも、大・中規模のフレアをいくつも起こして、
930黒点群がやや弱まっているのではないかと思われます。
しかし、こうして一休みしている間に、次のエネルギーを蓄えて、
再び激しい活動を始めることもありますので、完全に落ち着くまでは警戒が必要です。

SOHOの太陽写真が更新されていないため、930黒点群の現在の状況は掲載できません。


擾乱の報告は続きます。
次は太陽風です。
太陽放射線の増加によって、ACE衛星の太陽風観測ができなくなっています。
速度(黄色線)、密度(橙色線)、温度(緑色線)の3本のグラフは、正しい値になっていません。
磁場の変化は大丈夫です。

代わりに、SOHO衛星のプロトン観測器による太陽風速度のグラフを掲載します。
この図は2日間の幅を持っています。
この図によると、昨日のニュース以降、
コロナホールによる550〜650km/秒の高速太陽風が続いていました。

そして、7日20時(世界時7日11時)に、600km/秒から700km/秒への速度の上昇が発生しています。
速度の変化が急なので、X9.0の大規模フレア(5日19時半、世界時5日10時半)
にともなって発生したCME(太陽ガスの放出現象)の影響が、
地球へ届いたことによる可能性があります。
しかし、ACEの磁場データには目立った変化が無く、
実際にはCMEに関連したものではなく、コロナホール高速風の中での変化かもしれません。

CMEだったと考えた場合、
発生したのが地球から見て太陽の真横だったため、
地球へは飛び出したガスの端っこがやって来ただけです。
そのため、この程度の変化(大きな速度ですが、激しい乱れとは言えません)に留まったと言えます。
フレアが地球から見て太陽の中心付近で発生していた場合は、
猛烈な高速太陽風がやってきたことでしょう。

今後、X6.5のフレアをはじめとして、いくつも発生している中規模フレアによるCMEの影響が、
次々とやってくる可能性があります。
黒点群は次第に地球寄りに移動していますので、CMEの影響も次第に及びやすくなります。
特に、今後起こる長時間型のフレア活動には注意が必要でしょう。
活発な太陽活動が続く間は、太陽風の乱れにも注意が必要です。


極域では、活発なオーロラ活動が続いています。
AE指数では、800〜1000nT規模の中規模の活動が1日中続いています。
特に、図の後半で活発な変化が連続的に発生しているのは、
速度が700km/秒台に上昇したことが影響していると思われます。
シベリアの磁場データは、この2日間、活発な変動を記録しています。

沖縄の磁場データは、静穏レベルからやや下がった程度で、大きな減少は示していません。
オーロラ活動は活発に発生していますが、
磁気圏内に環電流を形成する様な磁気嵐の発達は見られていない様です。
これは、太陽風磁場が大きく南を向いていないことと関係しています。

現在の太陽風磁場は、強度が5nTに戻っていて、
現状では極端に激しい磁気圏活動が起こることはなさそうです。
しかし、CMEの影響で、太陽風が大きく乱れる可能性があり、状況を注視する必要はあります。


そして、高速風の中盤から見られる、
放射線帯の高エネルギー電子の増加も始まりました。
まだ警戒ラインには達していませんが、GOES 11(青線)、GOES 12(赤線)の両方とも、
1000を超え、増加の傾向を示しています。
磁気圏擾乱との関係もあり、このまますぐに10の4乗を超えるかどうかは分かりませんが、
衛星運用では、今後はこちらのグラフにも注意を払う必要があるでしょう。




太陽放射線によって、雪の様な白いノイズが舞うSnowstorm(吹雪)の状態になっているSOHO LASCO C2カメラ。
(c) ESA & NASA


SOHO LASCO C3カメラも同様に、Snowstorm(吹雪)になっている。
(c) ESA & NASA


SOHO衛星のプロトン観測器による2日間の太陽風の速度。7日20時(世界時7日11時)に、600km/秒から700km/秒へ速度が急上昇している。
(c) University of Meryland


GOES衛星の太陽放射線データ
(c) NOAA/SEC



GOES衛星の太陽X線データ
(c) NOAA/SEC



ACEが観測した太陽風の磁場(1番上の枠、白線は全体の強度、赤線は南北成分)
および、太陽風の密度(3番目の橙線)、速度(4番目の黄線)
(c) NOAA/SEC



リアルタイムAE指数
下段のAEグラフの値が高くなると、オーロラ活動が活発化しています。
(c) 京都大学, NICT



シベリアで観測された3日間の磁場データ
右側の3分の1が、昨日のデータになります。グラフが上がったり下がったりすると、オーロラ活動が活発化しています。
(c) NICT



沖縄の磁場擾乱
下へ下がるほど、擾乱が発達している事を意味します。
(c) NICT



GOES衛星による、静止衛星軌道における高エネルギー電子の変化
(c) NOAA/SEC



27日の太陽周期に合わせたデータプロット
太陽が同じ面を地球に向けていた27日前の変化から、今後を予想することができます。
(c) NICT
太陽X線
○はM以上
太陽風速度
km/sec
セクター
Bx (nT)
IMF Bz,Bt
nT
沖縄変動
nT
沖縄短期変動
nT
静止軌道電子
/cm^2 s sr
太陽X線
○はM以上
太陽風速度
km/sec
セクター
Bx (nT)
IMF Bz,Bt
nT
沖縄変動
nT
沖縄短期変動
nT
静止軌道電子
/cm^2 s sr


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篠原 学( shino@kagoshima-ct.ac.jp )宛てお知らせ下さい。